留置権って?借りたものを返さなくていいときがあります−民法で、自分と大切な人を守る−
こんにちは。リーガルライターの法崎ゆいです。
「借りたものは返しましょう」これって、子どものころから教えられる当然のルールですよね。でも、実は法的には、返さなくていいケースがあるんです。
留置権(りゅうちけん)という、民法に定められた権利があります。留置権が発生した場合、借りたものを返す必要はありません。
今回は、そんな留置権について解説していきます。
借りたものを返さなくていい、留置権って?
留置権とは、あるものを預かっている人が、それに関するお金を払ってもらえるまで返却を拒むことができる権利です。民法第295条に定められています。
これは、法律上認められた、防御手段の1つなんです。
たとえば、友人の壊れたパソコンを直してあげたとします。友人だから5000円でやってあげる約束だったとしましょう。でも、友人が5000円を払ってくれません。
このとき、あなたはそのパソコンを「返しません」と主張することができるんです。つまり、約束をしたのに、相手がお金を支払わないときは返さなくてもいいということです。
残念ながら「無料で修理してあげるね」という約束だった場合は、留置権は成立しません。
留置権が認められる条件
留置権は、なんにでもかんにでも主張できるわけではありません。成立するには、いくつかの条件があります。
・相手のものを占有していること
・そのものに関してお金が未払いであること
・お金の支払期限が過ぎていること
この3つを満たしていれば、返さないことが正当化されます。
「支払期限が過ぎていること」とありますが、いつまでに払ってねと伝えていなかったときは「そろそろ払って」と催促すれば、「支払ってくれるまで返しません」といえる権利が認められる可能性が高いです。
身近にある、留置権の例
留置権なんて言葉、はじめて聞いた!という方もいるかもしれません。でも、実は日常生活に関係している場面はたくさんあります。いくつか、イメージしやすい具体例をご紹介します。
自転車の修理屋さんにて
あなたが自転車を修理に出したとします。「3日で修理できます」と言われて、3日後に急いで受け取りに行きました。でも、そのときお財布を忘れてきてしまいました。
修理屋さんは「お支払いが済むまでは、お渡しできません」と言うでしょう。
「3日後に返してもらえると思ったからそのあいだはタクシーを使ったのに!いま受け取れないと明日もタクシー!困る!」と言ってもダメです。
修理代の支払いが終わるまで、修理屋さんは自転車を返す必要がないんです。
これがまさに留置権です。
ハンドメイド作家をしているとして
あなたがハンドメイド作家をしているとします。依頼されたアクセサリーをお客さんに送る準備ができました。
でも、依頼主が「やっぱりお金は来月まで待って」と言い出したとします。このとき、あなたはアクセサリーをお客さんに渡す必要はありません。
「まだ支払われていないので、商品はお渡しできません」と留置権を使って対応できるんです。
ちなみに、留置権が成立する条件として「相手のものを占有していること」というのがありましたよね。
ハンドメイド作品は、作家がつくったんだから作家のものでしょ?と思う方もいるかもしれません。でも、実は民法の原則としては、契約が成立した時点で買主のものなんです。
ただし、完全オーダーメイドであれば、引き渡したときにはじめて買主のものになるなど、細かなルールがあるため注意は必要です。
都合よく、返したくないから返さないということはできない
注意しておきたいのは、借りたものを返したくないときに都合よく使える権利ではないということです。
たとえば、友人から本を借りたとします。別件で友人があなたに「今度ごはんをごちそうするね」と言っていた過去があるとします。
このとき「あなた、前に私にごはんをおごるって言ったよね。まだおごってくれてないから、本は返さない」というのはダメなんです。
なぜなら、本と食事代がまったく無関係だからです。
留置権を主張するには、そのものと請求したいお金のあいだに関係性が必要です。
まとめ
先ほどの自転車修理の例のように、自分が返してもらえない側になることもあります。
もしも留置権の仕組みを知らなければ、「とりあえず返してよ!」「返してくれないなんて泥棒だ!」とトラブルになってしまうかもしれません。
でも、民法のルールを知っていれば「なるほど、相手は留置権を使ってるんだ」と冷静に対応することができます。
自分が留置権を主張する立場にも、主張される立場にもなりうるからこそ、民法のルールを知っておくことは、自分と大切な人を守る力になると思います。
「借りたら返す」が正解とは限らない、そんな場面もあることを、少しだけ覚えておいてください。
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