遺留分って?親の財産は絶対にもらえます−民法で、自分と大切な人を守る−

こんにちは。リーガルライターの法崎ゆいです。

もし「財産は、すべて寄付してしまうつもりだから、あなたには1円も相続させない」と親から言われたら、どう感じるでしょうか。

あるいは自分が妹や弟の立場で「遺産はぜんぶ姉・兄に渡す」という遺言書が残されていたらどうでしょうか。

法律を知らなければ諦めてしまうかもしれませんが、実は、民法には「それでも最低限はもらえる」というルールがきちんと定められています。

これを、遺留分(いりゅうぶん)と言います。


遺留分とは?「あげない」は法律的に通らない

遺留分は、一定の相続人が最低限もらえる相続財産の割合のことです。

たとえ遺言で「全財産を他人に譲る」と書かれていたとしても、民法で定められた遺留分は守られなければなりません。

「すべての財産をNPOに寄付する」という遺言が残されていたとしても、子どもや配偶者がいるなら、法律上その方々は一部を取り戻すことができるんです。

遺留分をもらえる人は、原則として次のとおりです。

・亡くなった方の子ども

・亡くなった方に子どもがいない場合は亡くなった方の親

・亡くなった方の配偶者


本当に遺産は“絶対”もらえるの?

ここで少し、お詫びです。

このあとお伝えしますが、時効や対象期間などがあるためタイトルのように「絶対」というのは、言い過ぎです。

でも、「親の遺言があるから仕方ないか」とか「寄付するっていいことだから諦めよう」とか優しい方ほど損をしてしまう可能性があるので、そんな方にこそ考えるきっかけを持ってもらいたくて「絶対」という言葉を使いました。

ご了承いただきつつ、読み進めてもらえると幸いです。


遺留分はどのくらいもらえる?

遺留分として、亡くなったあと子どもしか残らない場合、子どもは相続財産の2分の1をもらえます。あるいは、子どもがいない場合の配偶者も2分の1です。

子どもが1人で遺産が1000万円だった場合、最低限500万円の遺留分を主張できるということなんです。

また、配偶者と子どもがいる場合は、合わせて相続財産の2分の1なので、配偶者と子どもが1人ならそれぞれは4分の1になります。つまり、それぞれが250万円ですね。

亡くなった方に配偶者も子どももいなくて、親だけが相続人となる場合は、親がもらえる遺留分は相続財産の3分の1です。

遺留分権者として、どんな立場の方がいるのか、家族の状況によって異なるので、具体的には弁護士さんに相談することをおすすめします。


遺留分が侵害されたら、どうする?

遺留分があったとしても、お金が自動的に振り込まれることはありません

遺留分が侵害されているなら遺留分侵害額請求という手続きをとる必要があります。遺産を受け取った人に対して、自分の遺留分を支払ってもらうよう請求するんですね。

できるなら話し合いをします。あるいは、内容証明郵便で通知をします。それでも支払ってもらえないなら、調停や訴訟をする方法があります。

ちなみに、財産がすでに生前に寄付されていて残っていなかったらどうするの?っていう話ですよね。

この場合も、遺留分にかかわる贈与だと判断されれば、遺留分侵害額請求ができます。民法では、相続が開始する前一定期間内になされた贈与については遺留分として計算できるのです。


遺留分侵害額請求には期限がある

遺留分侵害額請求には期限があります。

原則としては、相続人以外の団体などに寄付されていたときは相続開始前の1年間の寄付に対してのみ遺留分侵害額請求が可能です。でも、これはあくまで原則であり、状況によっては1年前の日より前の寄付が対象になることもあります。

具体的には、状況によるので弁護士さんに相談してくださいね。


また、遺留分侵害額請求権には時効があります。

・相続が開始して遺留分を侵害する贈与や遺言があったと知ったときから 1年以内
・相続があったことを知らなくても、相続開始から 10年以内

被相続人が亡くなったことを知っていれば、前者があてはまるので1年しかありません。

遺留分というものを知っているかどうかで遺留分を受け取れるかどうかが大きく変わってしまいますよね……。

万が一遺留分侵害がわかったら、なるべく早く専門家に相談してくださいね。


遺産に借金が多かったら?

遺留分を主張できるとしても、実際、相続財産が借金ばかりだったら、主張しても意味がありません

すべての財産を足し引きしてプラスになっているかどうかを把握することが大切です。

亡くなった方が土地を持っていたり、株式を持っていたり、ローンを組んでいたりすると、すべてを把握するのは簡単ではありません。そんなときも、弁護士さんに相談することで解決しやすくなるので、なにせ、相談することをおすすめします。


まとめ

遺言や、生前に寄付などの贈与があっても、一定の相続人には最低限の取り分が保証されています。「遺産がもらえないかも」と思っても、民法は一定のセーフティネットを用意してくれているんですね。

相続が発生するときというのは、大切な方が亡くなったときです。お金のことを考えるのはしんどいかもしれませんが、なるべく感情に流されず、落ち着いて権利を確認することが大切です。

そのためにも専門家を頼ることが重要だと思います。


私はどこかの法律事務所の回し者というわけではありません。

ただ、たとえば、お腹が痛い人には内科を、頭が痛い人には脳神経外科を、耳が聞こえづらい人には耳鼻科をおすすめするように、もっと法律の専門家が身近になったらいいなと思っています。

それで救われることが、きっとあると思うからです。

亡くなった大切な方の想いはもちろんですが、それを優先しすぎず、残されたみなさんの権利がきちんと守られることも大切だと思っています!