【ビジネス法務】債権回収のための強制執行、方法と手順【売掛金③】

こんにちは。リーガルライターの法崎ゆいです。

ビジネスにおいて、取引先から支払われるはずの売掛金(うりかけきん)が支払われないと困りますよね。

そんなときは、最終的な手段として強制執行という法的手続きを取ることができます。

強制執行は、裁判所の力を借りて相手の財産を差し押さえ、売却などをして自社や自分の債権を回収する手続きです。

簡単にいうと、払ってくれないなら相手の財産から強制的に支払ってもらうということです。


強制執行に至るまでの基本的な流れ

強制執行は、いきなりできるわけではありません。

まずは、通常の方法で支払いを催促して、メール・電話・内容証明郵便などで支払いを督促します。それでも支払われなければ、裁判所に申し立てて支払督促を送ってもらったり、訴訟を起こして和解調書や勝訴判決を得たりします。


和解調書や勝訴判決は「債務名義」と呼ばれ、相手が支払い義務を負っていることを公的に証明する書類として、強制執行をするための法的な根拠になります。

債務名義があれば、裁判所に申し立てて相手の財産を差し押さえることが可能です。

強制執行に至るまでにやるべきことについては、前回の記事で詳しく解説しているのでこちらもぜひ参考にしてください。

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強制執行の代表的な4つの方法

では、強制執行にはどんな方法があるのでしょうか。取引先から売掛金を回収するための代表的な4つの手段をご紹介します。


1.現金や動産に対して強制執行をする

取引先のオフィスなどにある金庫やレジに保管されている現金を、そのまま差し押さえて自社に引き渡してもらうことができます。

また、工場内にある機械や備品などの動産から売掛金を回収することもできます。この場合は、裁判所を通じて競売にかけられて、落札・売却された代金から回収することになります。


<対象となる財産>
・レジや金庫にある現金
・パソコン
・製造機械
・業務用の備品
・商品の在庫
・会社の車両
・オフィスのデスクや棚 など


2.銀行口座の預金に対して強制執行をする

取引先の銀行口座の預金を差し押さえることも可能です。この場合は、事前に過去の振込明細などから、取引先が利用する銀行や口座情報を把握する必要があります。

裁判所を通じて預金口座を差し押さえれば、相手の銀行から自社の口座へ支払わせることができます。

ただし、差し押さえた時点で口座に十分な残高がなければ、回収ができないため注意が必要です。可能性もあります。


<対象となる財産>
・法人口座の預金残高
・過去に取引があった金融機関の口座


3.不動産に対して強制執行をする

取引先が土地や建物などの不動産を所有しているなら、その不動産を差し押さえることもできます。この場合も、動産と同じく差し押さえた不動産を競売にかけて、落札・売却された代金から回収することになります。

会社所有のオフィスビル・工場・倉庫などはもちろん、売掛金の連帯保証人として取引先の代表取締役が契約している場合であれば、代表者個人の名義のマンションなど差し押さえることも可能です。


<対象となる財産>
・取引先が所有するオフィスビル
・取引先が所有する工場

・取引先が所有する倉庫
・場合によっては代表者個人名義のマンションや土地 など


4.債権に対して強制執行をする

取引先が持つ債権に対して強制執行をする方法もあります。

簡単にいうと、取引先が他社から受け取る予定の代金を差し押さえ、回収するということです。対象となる他社に対して、「そのお金を取引先ではなく、私たちに支払ってください」と命じることができます。

ただし、債権があることや相手先の情報を正確に把握しておかなければなりません。


<対象となる財産>
・取引先が他社に対して持つ売掛金
・取引先の保険金の受取権
・取引先の請負契約などに基づく報酬債権


まとめ

強制執行は、売掛金回収において非常に有効な手段です。けれど、差し押さえる財産を特定できなければ、手続きがうまく進みません。

まずは、取引先がどの銀行口座を使っているか、所有している不動産はあるか、どんな顧客と取引しているかなどの情報を集めて整理しておきましょう。

何より、強制執行の申立てや手続きは専門的で複雑なことが多いので、弁護士に相談しながら進めるのがおすすめです。

売掛金回収には手順がかかり、時間がかかるため、早めに弁護士に相談をして法的な対応を検討してみてください。